笹森司祭のメッセージ


                                   
                              「命と死」         
                                         
                             仙台聖フランシス教会 管理牧師
                           東北教区 司祭 アタナシオ 笹森伸兒


                                               (聖フランシス教会 2015年9月号・月報) 


 私は、子どものころから読書が好きで、剣客ものや冒険ものが好 きなのは今でも続いています。考えてみればおかしいもので、命の尊さを説く司祭が、なぜ殺し合いや戦いの本が好きなのかと自問したことがありました。
そして無理無理こじつけたのが、死の反対は命だということでした。やはり無理でしょうかね。
 今読んでいるのは、「ラミジ艦長物語」です。当時の英国海軍は大西洋、地中海、カリブ海を制して、コルシカ出身のナポレオンの世界制覇を阻む唯一の壁と言えました。ラミジ艦長はフランス海軍と戦う中でさまざまな功績を上げますが、部下の犠牲の数が思ったより少なかったと誉めたたえられる中で、この犠牲は自分の戦略の不充分さから来たのではないかと思い悩む箇所があります。ラミジ艦長にとっては、勝利と死は同じに語ることができない問題だったのです。

 生あるものはいつか必ず死を迎えます。そう考えれば、死は必ずしも不幸とは言えないのかも知れませんが、死を迎えるまでどんな命のときを過ごすかが大切なことだけは、自明の理です。小説だけではありません。私たちにとっても大切な問題で、私たちのお手本は、やはり主イエス様の「命と死」です。