管理牧師加藤主教のメッセージ


                       カンタベリー大主教とお会いして
                                         
                             仙台聖フランシス教会 管理牧師
                           東北教区 主教 ヨハネ 加 藤 博 道


ちょうど約1ヶ月前、10月29日に、新しいカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー師父と東京でお会いすることになりました。韓国で開催される世界教会協議会(WCC)という世界的な大会に行かれる途上、是非、東日本大震災の被災者の方、また東北教区の関係者と会いたいとのご希望で実現したもので、東京の主教座聖堂・聖アンデレ教会のホールで、植松首座主教、管区の相澤総主事、通訳の方、そして磯山聖ヨハネ教会の三宅さんご夫妻、越山健蔵司祭、加藤によって約2時間近くお話をしました。三宅さんは親族を亡くされ、自宅も全壊、ご自身も津波の中で九死に一生を得られた経験を話され、越山健蔵司祭は原発事故による福島の現在も極めて困難な状況について、写真をお見せしながら話しました。「その話をすることだけでも、大変勇気の要ることだと思います。感謝します」と非常に熱心に耳を傾け続け、メモをとり、質問をされた大主教の真摯な姿勢もまた印象的でした。その後、日本聖公会の全主教との懇談の時も持ち、日本聖公会各教区の様子を熱心に聞いておられました。今日もなお、世界の聖公会の指導者から覚えられているということを感謝したいと思います。
 災害や戦争・紛争の犠牲者の問題に、犠牲者・被災者の数の多少は問題ではありません。同時に、カンタベリー大主教の立場、いや世界の聖公会の状況から言えば、とくにやはりヨーロッパはかつての植民地でもあったアフリカやアジアの国々への関わり、関心が強くあります。そこではまさに何百万人という人たち、子どもたちが日々直接に命の危険に晒され、銃弾が飛び交い、飢餓状態に陥っていたりします。その意味では、日本のこの大震災は、それでもまだ「先進国」「経済大国」で起こった災害と言えます。だからまだ容易だと言いたいのではありません。日本という、経済大国の中にあっての大震災の被災者、被災地の困難には、また特別の意味や性格もあろうと思います。しかし圧倒的な人権侵害や生命の危険も世界には満ちています。アフリカにも多くの関わりを持つカンタベリー大主教の立場では、本当に世界は苦難に満ちていると言わざるを得ないことでしょう。同大主教は、経歴からいえば長くビジネスマンであられたようです。聖職者の仕事としては、ずっと「和解」の働きに携わってこられたそうです。そういう方が今この時代、大主教になるということも、時代が求めたことなのだと感じながら、帰ってまいりました。




                                             (聖フランシス教会12月号・月報 巻頭)
                             
                
                                          

                <日本聖公会東北教区主教。仙台聖フランシス教会管理牧師。加藤博道>